小児救命救急法の資格を取ろう!
~なぜ指導者・保育者は、
子どもの救命救急法 資格を
取得すべきなの?~
なぜ子どもの指導者・保育者は、救命救急法の資格を取得すべきなの?
あなたはイザ!という時、子どもの命を守るために、『適切な応急処置』を『適切なタイミング』で行う自信はありますか?
子どもの傷病に対応義務のある指導者・保育者は、その自信があろうと、無かろうと、もしもの時には保護者や社会から、そのような対応を期待されています。また「なぜ救急車を呼んだのか?」「なぜその処置をしたのか?」についても、しっかりとした『根拠』が伴わなければ、上司や保護者に説明することが難しくなります。
一方、救命救急の手順には、最新の研究結果に基づいた世界共通のガイドライン(※)があるのをご存知でしょうか。このガイドラインは、私たちが『適切な処置』を『適切なタイミング』で行う上での『根拠』となり、法的な拠り所ともなるものです。
もし、お預かりしているお子さんのケガや病気に対して、自己流や民間療法、あるいはネットで慌てて調べた応急処置等を行った場合、上記のガイドラインから大きく逸脱していたりすると、過失に問われる恐れがあるばかりでなく、傷害罪が適用される可能性があることさえ否定できません。
救命救急法の資格を取得することは、単に知識やスキルを身につけるだけでなく、そのガイドラインを学んだことを、第三者(認定機関)から法的にも認められたことになります。
職務で子どもとかかわる指導者・保育者にとって、「救命救急法資格を持っていることは、必須条件です」と言っても、過言ではありません。
※国際蘇生連絡委員会(ILCOR:イルコア)が作成している、国際コンセンサス(CoSTR:コースター)が、世界共通のガイドラインとして認知されています。日本蘇生協議会(JRC)では、この国際コンセンサスに、日本の法律や医療事情等を加味して『JRC蘇生ガイドライン』を作成しています。国内で実施されている救命講習のカリキュラムは、どれも基本的にJRCのガイドラインに沿って作成されています。
救命救急法を学べれば、どんな講習でもいいの?
救命救急法講習のレベルには、大きく分けて次の2つがあります。
1.『医療従事者』向け
2.『一般市民』向け
さらに、2つ目の『一般市民』向けは、次の2つに分けることができます。
2-1.『義務の救助者(一定頻度者)』向け
2-2.『善意の救助者』向け
このうち、2-1の『義務の救助者(一定頻度者)』とは、職務で人とかかわる仕事についている人たちを指します。具体的には、客室乗務員や警察官、学校等の教職員、さらに、保育者、幼稚園教諭も、ここに含まれます。
厚生労働省の通達によれば、『義務の救助者(一定頻度者)』には、『善意の救助者』よりも、高度な救命救急法のスキルが求められています。
自治体の広報などで募集している2時間程度の救命講習は、『善意の救助者』を対象とした内容となっていますので、こちらを受講しただけでは、残念ながら指導者・保育者に期待されている十分なスキルを身につけている、とは言えません。
また、特に子どもの応急処置では、人工呼吸をどうすべきかなど、子どもに推奨される処置と、『善意の救助者』が街で倒れている大人に対する処置とで、異なるガイドラインが示されている部分もあります。子どもの命を預かる指導者・保育者にとって、この違いを理解しておくことは極めて重要です。
結論としては、『義務の救助者(一定頻度者)』向けで、かつ『子どもの救命救急法』のカリキュラムを含んだ講習を受講することが、子どもとかかわる指導者・保育者にとって最も推奨される講座ということになります。
しかし、これら2つの条件を満たした救命講習は、現在それほど頻繁には開催されてはいません。チャンスがあれば、是非その機会を逃さず受講されることをお勧めします。
救急法の資格は1回取得すれば、再受講の必要はないの?
「もう5年以上前だと思うけど、過去に救命講習を受けたことがあるから、私は受講しなくても大丈夫。」そう考えている方は、いらっしゃいませんか?ほとんどの救命救急法の資格は、2年ないし3年の有効期限を設定しています。こうした有効期限を設ける理由については、次の2つが考えられます。
1. 救命処置を行う機会は、通常滅多にあるものではないことから、学習した手順を時間の経過とともに忘れてしまうことが想定されるから。
2. 国際的なガイドラインが、新しい研究結果に基づいて更新・変更されることがあるから(※)
子どもとかかわるプロとして、救命救急法のトレーニングは、1回限りではなく、最低でも2年に1回(できれば毎年)、定期的に受講されることを、強くお勧めします。古い手順を覚えている人と、最新の手順を学んだばかりの人では、異なる手順をそれぞれが『正しい処置』と判断し、現場が混乱する恐れもあります。教育や保育の現場では、常勤も非常勤も、すべての職員が最新のガイドラインを身につけておくことが、推奨されます。
※2023年現在、最新の国際コンセンサス(CoSTR)は、2020年版です。
有効期限内の資格さえ持っていれば安心?
救命救急法は、命に関わる傷病が身近で発生した時、必要不可欠な知識であることは言うまでもありません。
しかし、実際の事故現場は、講習会で習った時の状況とは大きくかけ離れていることがほとんどです。(例:事故現場が浸水している、傷病者がうつ伏せの姿勢、処置に必要なものが見つからない等)
このような時、ほとんどの市民救助者に起こりがちなことは、あまりの状況の違いから頭が混乱し、習ったはずの手順をすっかり忘れてしまったり、右往左往して処置が遅れてしまったりすることです。
救急搬送が必要なケースでの『手順の忘れ』や『処置の遅れ』は、助かるはずの命を救えないという結果に直結する恐れがあります。
このような緊急時にこそ、落ち着いて、『適切な処置』を『適切なタイミング』で『根拠を持って』行えるようになるためには、どのような準備をすれば良いのでしょうか…?
それは、事故に近い状況を、安全なトレーニング環境の中で再現し、受講者が講習で学んだことに基づいて、自ら考え、判断し、模擬
さらに理想としては、経験豊富なインストラクターを招いて、園内研修として救命救急法とシナリオトレーニングを行うことをお勧めします。個人のスキルや実践力が高まるだけでなく、職
常日頃から、教育や保育の現場でケガが起こらぬよう事故予防に取り組むことは、子どもの命を預かる私たちにとって、最も優先度の高い役割であることは言うまでもありません。しかしその一方で、生活や体験活動の場で発生しうる一切の事故を、100%防ぐことは、現実的に不可能です。
だからこそ私たちは、万が一の時に備えて救命救急法の資格を取得することで、世界共通のガイドラインを身につけ、イザ!という時に、それを実践できる力も同時に養う必要があります。
救命救急法の資格を取ろう!まとめ
■ 子どもの指導者・保育者は、子どもがケガを負った時、『適切な処置』を『適切なタイミング』で『根拠を持って』行うことが期待されている。
■ 救命救急法の資格を取得することで『適切な処置』等につながる世界共通のガイドラインを学べるだけでなく、第三者機関から認証を受けることができる。
■ 職務で子どもとかかわる人には『義務の救助者(一定頻度者)』向けで『子どもの救命救急法』のカリキュラムを含んだ救命講習の受講がお勧め。
■ シナリオトレーニングは、指導者や保育者個人の実践力を高めると同時に、組織として、より迅速・適切な対応につなげることも期待できる。